そこにあるのは、庭石か、隕石か。偶然の産物なのか、それとも・・・。
整然と、そして乱雑にも見える巨石の列は、それが自然が作り上げたものとは思えない不自然さと、しかし偶然できたにしては美しい並びを見せています。まるで玩具を並べたようにも見えるその不思議さ。
巨人が、お手玉を並べたとされる押戸石の丘は、そんな奇妙な空間を広大な大地の上に現しています。
駐車場から丘に登るには、二本の道がありますが、我々は意識せずに左ルートを選びました。
結果、シュメール文字が刻まれているという巨石を手前に見ることになりますが、あまり現地の説明を頭に入れずに登ったため、その文字の確認をすることなく、空撮準備を始めてしまい・・・。それが実に残念なことであるのは後になって気づきます。
雨雲が大地の向こうから近づいてくる。大地が広大過ぎて天候の変化が手に取るように分かります。
大地は、厚く低く垂れ込めた雲に押しつぶされそうになり、それを、間に挟まれた阿蘇の山々が支える。
日本とは思えない光景が広がります。
太陽と雨という登場人物が揃えば、そこに偶然に現れるのは虹。
大地に現れた虹は、およそ映画やアニメでしか見ることはできないのではないか、と思えるほど、端と端が大地につながる半円をしっかりと見せる広大な架け橋。
それは、偶然ルートを間違えた私たちに、その道で正しいのだよ、と言ってくれたような、歓迎の印とも思える虹。
恐らくは、通いつめても年に一度見ることができるかできないか、と思えるほど、この虹との巡り合いは単なる天気とは片付けられないほど、神秘的なものでした。
この日の撮影は、その後の雨で早々に撤収。
晴れていれば、絶景を気持ち良く撮影できたと思うのですが、残念ながらそれは叶いませんでした。
押戸石の丘が、次に来るチャンスを与えてくれたと思っていいのでしょう。関東から見たら、火の国熊本は遥かな西国。簡単には行けない場所ではあるのですが、それでも来いよ、待ってるぞ、と、この丘はそんな風に私たちに語りかけてくれた、そう思えてなりません。